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“面白がり屋”のブロガーたちが、今日も「つれづれなるままに……」。

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PROFILE

SHOICHI KAJINO
梶野彰一

フォトグラファー/文筆家/パリ


幼くして自らをフランス人だと思い込む国籍同一性障害を発症。それ以来、心はパリに置き去り。悲観的なので口癖は「メルド!」と「セラヴィ」。好きな区は7区。好きな避暑地はサントロペ。好きなお城はヴェルサイユ。座右の銘は「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」。どちらにせよフランスのために生きようと日々思っています。
http://cherchem.exblog.jp


Shoichi KAJINO
Photographer, Journalist or Fou de la France


Bonjour de CASINO DE PARIS!
The first symptoms of national identity disorder appeared in my youth. Since then my heart is belonging to Paris.
My favorite French words are "Merde!" and "C'est la vie". My favorite arrondissement is 7ème. My favorite vacances are in Saint-Tropez. My favorite chateau is Versaille, of course. "Let them eat cake", devoting my life to Paris and France! Voila!

CALENDAR

Rendez-vous au PARADIS

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ここ数年でいちばん待ちわびていたアルバムが届いた。
「Recto Verso 表 裏」と題されたParadisのデビューアルバム。
音のレイヤーが決して多いわけでもなく、むしろ限られた音だけを精緻に置いて作られたようなトラック。
フレンチ・シャンソンの果敢なき幸福感をたたえる歌にはきちんと韻が踏まれている。
静かにこみ上がる抑制のリリシズム。
二人のパリへのファンタズムはとにかく琴線に触れすぎる。


夏が続くわけではないと気付く季節、人生の夏のほてりを冷ますために、パリのさとり世代代表によって用意された、かぎりなく透明に近いグランブルーの飛沫を浴びようと思う。

ピエールとシモン、この10年で最大のフレンチ・ミュージックの才能に出会ったと信じている。Paradis はパラディと読んで下さい。

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| PARADIS | photo: sk |

Le Vide est ton Nouveau Prénom

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LA FEMMEのニューアルバムばかり聴いている。
「Le Vide est ton Nouveau Prénom」(空虚はあなたの新しい名前)とか歌われて、その棘が刺さらないではいられない夏の終わり。
そして「Où Va le Monde」とタイトルが示すとおり、世界の行く末を投げやりに危ぶみながら、重ねられる疑問符には回答を出すわけでもない刹那なセラヴィ感こそが2016年。
さあ、君を遠く遠く後ろに置き去るよ。


LA FEMMEのことを知ったのは2010年にリリースされたデビューEPで、そのジャケットにクールベ「世界の起源 L'Origine du Monde」を雑なトリミングで引用する恐れを知らないテリブルさは鼻についたものの、収まった「Sur la Planche」と「La Femme Ressort」という2曲の奇妙な魅力に、当時の僕が脳内エンドレス再生を繰り返すのを抗うことは容易ではなかった。フランスのレコード大賞みたいな場で評価されてしまった1枚目のアルバムには若干の違和感を感じながら、新しい曲を待つわけでもなく待っていた3年。

この2枚目のアルバムのジャケットでもみせる相変わらずの「世界の起源」への固執っぷりは、もはや中二も悪趣味も超えて、堂に入った感があって「女 LA FEMME」の「神秘 MYSTÈRE」という作品にはなるほどぴったりだ。
何よりもそこに詰込まれた17曲が素晴らしく、そのジャケットも、テキトーなミュージックフィルムも、まあそれはそれで良いという気になる。

そういえば、彼らが「MYSTÈRE」という名義で作った「ME SUIVE」という曲があった。2015年の1月のサンローランの「PARIS SESSION」のためのもので、そのクレジットを見れば覆面というわけではなかったけれども、このアルバムには収録されなかった。

そのときモデルもつとめていたメンバーのマーロンが今年4月に急に東京に来た。「今夜渋谷でDJする」というので、とにかく会いに行った。

前のアルバムの出た際、フレンチ/サイコ/ガレージ/サーフとかの単語を並べてその魅力の説明をこころみていたけれど、それに倦怠とポエジーが色濃く加わった今回のLA FEMMEに、もはやビアリッツの湿った風は吹くことなく、海のないパリのあいまいな夏の終わりにからりと響く。

Éric Rohmer est Mort

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ふと、エリック・ロメールの特集上映があるのを知る。
もうこの週末からだ。

この春にリリースされたCLIOというお嬢さんのレコードを聴いてかたまった。
「エリック・ロメールが死んだ」という曲が素晴らしすぎる。
歌詞を聴いているといろいろなロメールの映画が脳裏をよぎるのだけれど、結局どれがどの映画だったかは思い出せない。


ピカソ美術館で少年たちが話すのはどの映画だったろう。
哲学の先生が出てくるのは、数学の話題が出てくるのはどの映画だったろう。
マリー・リヴィエールは何本のロメール映画に出ていただろう。

ほとんどのロメール映画で主人公たちは、公園のベンチとかカフェとかテラスとか道ばたでで、ワインとかカフェとかタバコを片手に、あるいはただ歩きながらずうっと話している印象がある。
ほとんどのロメール映画を、僕は六本木とか渋谷とかの小さなスクリーンで観たり、VHSで一生懸命に観たけれど、たいていは途中でフランス語の心地よさに負けて眠りに落ちた思い出がある。

それでも好きな作品は何本もある。
「緑の光線」「クレールの膝」「海辺のポーリーヌ」「夏物語」「満月の夜」......
タイトルは容易に挙げられるけど、ロメールの描く夏のお話が好きで、すべてのあらすじを混同している気がする。
「満月の夜」はELLI et JACNOの音楽とパスカル・オジェの存在があって特別な一本。

なぜかニューヨークでフェニックスといっしょにロメール映画を観るというファンの集いがあって「コレクションする女」を英語字幕で観た。
それはソフィア・コッポラが自宅の棚から選んだ作品だった。
ロメールが死んだ2010年のことだった。

なんでも先のCLIOは大学でロメールをテーマに論文を書いていたそうで、その完成する前にロメールが亡くなってしまって、この歌が生まれたんだとか。

僕ももっともっとロメールの語り口で、どこか寓話めいたような他愛のないエピソードをききたいと強く思った。
たぶん、また途中で眠ってしまうだろうけど。

VOLEZ VOGUEZ VOYAGEZ

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4/23から紀尾井町の特設サイトで始まったLOUIS VUITTONの歴史をめぐる大回顧展「VOLEZ VOGUEZ VOYAGEZ」
今回はオープニングにあたってのエトセトラの撮影でご一緒させて頂いたおかげもあって、じっくりすみずみまで見ることが出来た。

昨年パリのグランパレで行なわれていた展覧会の巡回展であるが、日本とLOUIS VUITTONの深き関係を考えれば、単なる巡回に終わらない。
16のセクションに渡ってブランドの歴史や魅力をひもといている展覧会、その最後のセクションのテーマはまさに「日本」。草間彌生、村上隆、川久保玲とのコラボレーションで生まれたまだ記憶に新しいいくつかのモノグラムのバッグ。そして白州次郎所有のLOUIS VUITTONの鞄の横には、なんと板垣退助がパリで買ったというLOUIS VUITTONのトランクが鎮座している。


この展覧会があまりに魅力的だったのは、僕の執拗なトランク愛のせいもあるかもしれないが、それだけだろうか。
LOUIS VUITTONの歴史はそのまま「旅のスタイル」の変遷の歴史でもあったわけで、トランクやバッグの形状が旅のスタイルとともに、どのように進化していったかを辿ることが出来る。かつて裕福な旅人たちは、いかに「日常のすべて」を持ち運べるかを挑戦していたかのような時代もあった。この直方体の箱に「ワードローブを」「書斎を」そのまま詰め込むとか。船・列車の旅から飛行機の旅に移っていくと、いかに必要最小限で身軽に動くかに重点が移ってくる。

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一番小さなトランクはニコラ・ジェスキエールのファースト・コレクションでアップデートしてミニマムに最小化したもの。スマートフォンとカードケースくらいしか入らないサイズのそのポーチの右端にマークされた3つの「X」はかつてのアーカイヴからインスピレーションを受けていたのを知る。

マティスやヘミングウェイからムッシュ・ディオール、イヴ・サンローランまで顧客カードがずらりの並んでいたのにも圧倒されるが、LOUIS VUITTONのトランクといえば、忘れられないゲンスブールのエピソードがある。かつて葛籠のような大きなLVのトランクを買ったセルジュは、その特徴的なダミエだったかモノグラムの柄を隠すようにと真っ黒に塗って愛用していたというもの。その写真を(あるいはあの回顧展で現物を?だったのか)どこかで目にした記憶があるのだけれど見つからない...。

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このカスタマーカード、マティスが当時住んでいたニースのシャルル・フェリックス広場の住所まで記していて感動するが、なんだかフィリップ・ワイズベッカーが描いた作品のようなかわいらしさもある。

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その横にはダミアン・ハーストの蝶々が舞い、リチャード・プリンスのリトグラフが並んでいる。ステファン・スプラウスのグラフィティが入ったスケボー・ケースもあった。第一の部屋にはひっそりギュスターヴ・クールベの油彩が飾ってある。奇妙なミュージアムのような。


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個人的に小さく(でも板垣以上に)驚喜したのはウェス・アンダーソンが「ダージリン急行」の撮影のためにマーク・ジェイコブスに依頼した、動物柄が刻印された一連のトランク、バッグのシリーズを目の前に発見したことだった。

そのテーマを追いながらもランダムな展示は、時代も空間も自由自在に行き来して旅するような感覚がある。その振り幅は膨大すぎていくらでもカルチャーを詰め込められるほど。


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そして、この展覧会のオープニングにあわせて来日したソフィア・コッポラをフォローするというありがたすぎる日々でもあった♥

メルシー LOUIS VUITTON!


Le départ d'Hedi Slimane

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エディ・スリマンがSAINT LAURENTを去るという発表。
出来れば最後の最後まで信じたくはなかったけれど、「C'est Officiel」の書き出しの一報には力が抜けてしまった。

年明け早々に退任の噂が流れ、1月のパリを急遽キャンセルしてロサンゼルスで盛大な「AT THE PALLADIUM」コレクションを発表した時点で、あれがエディの最後の花火なんだと多くのファンは確信してしまっていたと思う。

そして3月7日、ユニヴェルシテ通りのクチュールハウスを会場に披露された「LA COLLECTION DE PARIS」。
これまでのSAINT LAURENTのショーを印象づける音もなく、光の演出もなく、「ニュメロ・アン、ナンバー・ワン...」の淡々としたルック番号を告げるアナウンスと、モデルたちの足音が石の床に響いたコレクション。
とてもありがたいことに、これまでメンズ、ウィメンズ、ひとつたりも逃すことなく全てのエディのSAINT LAURENTのショーに立ち会わせて頂いてきたのだけれど、どうしてもこのショーだけは生で見ることが出来なかった。

「LA COLLECTION DE PARIS」はクチュールではないとしながらも、明らかにこれまでのSAINT LAURENTで発表してきたコレクションとは一線を画すリュクスな美しさで、ムッシュ・イヴ・サンローランへの愛と敬意に満ちていた。殊に最後に大きな赤いハートのドレスが登場した時の会場に響いた大きな喝采は忘れられない。生涯「LOVE」をテーマにしたムッシュへの敬意の結晶だった。
ショーの最後、拍手の中で登場したエディはムッシュ・ピエール・ベルジェのもとに近づいて、彼の頬にキスをしたというエピソードを聞いた。

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エディ・スリマンのSAINT LAURENTはあまりに美しく完結してしまった。
人々が靡(なび)きはじめると、もうどこかへ逃げ去ってしまう。
誰にも追いつかせない エディ・スリマンはそういう人だ。

Merci et à bientôt, Hedi...


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